―― 今年の株式市場は年初こそ勢いよく買われましたが、その後は調整を余儀なくされています。今はまだ大勢上昇トレンドを維持していると思いますが、この流れがこのまま継続するかどうかは定かではありません。例えば、世界情勢は日々変わるわけですから、金融や経済、政治といったさまざまな要素が絡み合って相場に影響を与えているとすれば、2カ月先の相場を正確に当てることは、市場関係者でも至難の業といってよいと思います。ただ、全体観というものは常に必要であり、定性的な見地で今の相場がどういった位置にいるのかを考えるということは投資家としても大切なことだと思います。

 東京株式市場に求められるポジティブな材料を3つ挙げるとすれば、まず「円安」、そして「強い米国経済」そして意外に思われるかもしれませんが「原油市況高」です。

 円安は外需系企業の輸出採算を改善させ収益メリットを生みます。日本は輸出で稼ぐ企業が多いため、株式市場で円安はプラスの思惑として株価上昇に追い風となります。過去をさかのぼってもドル円相場と日経平均の連動性は極めて強く、"アベノミクス相場"は同時進行した円安こそが最大の功労者といってもよいくらいです。

 また、米国経済が好調であれば世界経済も潤います。今は、トランプ米大統領の米国第一主義のもと通商摩擦問題がクローズアップされており、この行方が大きな影響をおよぼす可能性はあります。しかし、それでも米国経済が強ければ、例えばトヨタ自動車のように現地生産を増やすなど、いくらでも摩擦を避ける対応は可能です。要は米国経済が強靭であれば、米国株市場は強調展開を維持することができ、また日本株市場もその恩恵を享受することができるのです。

 最後の原油高についてはちょっと切り口が違います。原油価格の上昇は日本企業にとってコストの増加をもたらし、収益面では確かにマイナス材料に見えます。しかし、原油価格が上昇することで株式需給面から実は追い風となる材料があるのです。それは、オイルマネーの存在。原油価格の上昇で産油国の懐が温まれば、中東や北欧の政府系ファンド(SWF)の投資余力が拡大し、日本株市場にその資金が"外国人買い"という形で流入するというシナリオが描けるのです。SWFの資金は長期保有の傾向が強く、いったん流れ込めば株価上昇の礎となります。

―― それではまず、株式市場の長期サイクルについて考えてみましょう。株式市場が上昇トレンドを描くときは、まず金融緩和によりだぶついた資金が株価を押し上げる「金融相場」、そして次に低金利環境で企業の収益が改善し、業績が株高に反映される「業績相場」があります。しかし、その後は、景気過熱を防ぐ金融引き締めが「逆金融相場」という形で全体を下落トレンドへといざない、さらにその先は企業業績の悪化を背景とする「逆業績相場」という下り坂が続きます。今は、日米ともに企業業績は好調で「業績相場」のなかの株価上昇局面と言っていいと思いますが、FRBに続きECBも金融引き締めの方向に動き始めるなか、全体観としては「業績相場」の後にくる「逆金融相場」への入り口を意識せざるを得ないタイミングといえます。

 今年はまだその時期には来ていないと考えています。しかし、来年は注意する必要があると思います。来年はラグビーのワールドカップが日本で開催されるほか、2020年には東京オリンピック・パラリンピック開催が予定されており、これが内需を盛り上げるという見方が株式市場においても株高思惑の拠りどころとなっています。普通に考えれば、相場が悪くなるイメージは湧かないのですが、実際は五輪特需については前倒しで織り込まれている分、プラス効果は限定的となりやすいのです。

 それよりも気をつけなければいけないのは、来年10月に予定される消費税の10%への引き上げでしょう。2019年3月期は全産業ベースの経常利益で8~10%の増益が想定されます。2020年3月期も増益基調は続きそうで、その意味では業績相場の流れが継続して不思議はないのですが、為替の動向や日銀の出口戦略(超
金融緩和環境からの離脱)など不透明要因が多く、来期の業績については正直流動的であるといえます。そのモヤモヤとした雰囲気が漂うなか、消費増税実施となれば全体相場はそれの前倒しでトレンドを下落転換させる可能性も頭の片隅に置いておくべきでしょう。

 強靭な米国株市場もリーマン・ショック後の2009年の年初を起点に今は上昇10年目にあるわけです。どんなに強くても永遠に上がり続ける相場はありません。来年は用心するべきタイミングにはあると思います。

―― そうですね、基本的なところでは株価のモノサシとして「PER(株価収益率)」「PBR(株価純資産倍率)」「配当利回り」などの伝統的な株価指標を押さえておきたいですね。これらは、いずれも株価が動けばそれに連動して変化するもので、その時の株価が割高なのか割安なのかを教えてくれます。もちろんこの3つのモノサシは万能ではなく、実際は割高でも買われる株、割安でも買われない株がたくさん存在するのですが、その企業の株価がどういったポジションに位置するのかを知る上で、常に確認しておくことは必要です。

 例えば7月末現在で東証1部全銘柄の平均PERは15.2倍近辺、PBRは1.3倍台にありますが、簡単に言ってしまえば、当該銘柄がこの数字より低ければ割安ということになります。また、配当利回りは7月末現在の東証1部単純平均で1.6%台であり、こちらはこれよりも高い数値ならお買い得ということになります。実際は、業種によって平均値も変わってくるので、類似業態で比較する必要がありますし、企業の成長力(増益率)によっても評価は変わり結構複雑なのですが、他の銘柄と比べて割高か割安かを知るための基本的なコンセプトは一緒ですので、ぜひ活用してほしいですね。

 あとは投資のタイミングについては、業績面に影響をおよぼすポジティブサプライズ(いい意味でびっくりするような買い材料)が出ればそこは買い場となります。高い技術を持っていても収益面で低迷しているような企業に、大手企業が資本・業務提携という形で株主に入ってくるようなケースではほとんどの場合、株価は大きく変貌します。もっとも発表されてしまえば買い気配で始まるケースが多いので、一回高値を形成したあとの調整局面を経て、株価が落ちついたところを拾うというのが、実践的な技といえます。

 現実問題として、何か好材料が出てしまえば株価は瞬時に大きく上昇してしまい、下手をすると高値をつかむことにもなりかねません。理想を言えば、本当に強い銘柄は材料が表面化しない中で株価の水準を切り上げていくもので、こうした銘柄をうまく拾えれば上級者でしょう。"言うは易く行うは難し"ですが、具体的にはチャートの形と日々の売買高に着目しておくことです。株価の動きは地味でも売買高が通常より膨らんでくれば、それだけマーケットで注目されているということなので、チャートが上向きで売買高が増加傾向にあるものを丁寧にチェックしておく努力は求められます。仮に見ているうちに上がってしまっても無駄ではありません。「こういう形で上がるのか」と学ぶことは投資家としての経験値を高め、次に生かすことができるからです。

 一方、投資において非常に重要なことは「防御」する姿勢を忘れてはならないということです。例えば株価が5%(あるいは10%)買い値を下回ったらロスカット(損切り)をするといったルールを自ら徹底する。損をした形で持ち株を現金化するのはとても勇気のいることですが、株式投資というのは出だしに思惑を外すと、その変調な流れが加速することが多いものです。失敗したと思ったら傷の浅いうちに手仕舞う(売却する)のが株式投資で勝ち残るための最重要テーゼといってもよいでしょう。


 確かに短期投資でリターンを期待するのであれば対象とはなりにくいですが、長い目でみた場合、とても魅力的な企業が多いことは事実で、不動産に投資するような感覚でその企業と長くお付き合いするという姿勢が大切ではないでしょうか。まずは、住んでいる街や故郷の地域活性化のために地元企業を応援する意識を持つことだと思います。株主として「株主優待」や「配当金」などをもらうことに喜びを感じ、その企業の成長を見届けるといったようなイメージですね。これは、むしろ株式投資の原点といっていいかもしれません。

 地方銘柄の中には、目立たなくてもキラリとした輝きを携えた将来有望な企業がいくつも存在します。もちろん「単場会」のなかにも数多い。投資家にとって、株式市場と日々対峙することが投資のすべてではありませんし、実際それはせわしいものがあります。それより長期視点で企業成長を見守る、といったオーナー意識にも通じたスローな投資スタンスのほうが向いているという方もおられると思います。企業は数多くの個人投資家の応援を、次の成長に向けての活動の源として企業価値向上に向けて邁進する。そして投資家は、地元企業を応援しながらその地域で暮らしていく、というライフスタイルなんてとても素晴らしいと思いますね。