九州の活力支える中小企業
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2011年3月11日に発生した東日本大震災は、その直後には九州・沖縄で活動する企業の景況感にも大きなマイナスの影響を及ぼした。だが、被災地から離れた地理的条件を持つ九州が、今後の震災復興と日本の景気回復に果たすべき役割は大きい。特に、自動車や半導体、鉄鋼・造船などに続く、成長分野の開拓とその周縁を固める中小企業の育成は、雇用を始めとする地域経済の発展にとっても要となる。
2008年9月の米大手証券リーマン・ブラザーズの経営破たんが象徴した米国発の金融危機による世界的な景気後退からの回復過程に入っていた九州・沖縄の企業マインドは揺らいだ。製造業では部品供給が滞ったことによる自動車生産の急減、非製造業でも大震災前には絶好調だった中国・韓国など海外からの観光客が文字通りに姿を消したことなどの負のインパクトがあった。


■「大震災」耐える九州の中小
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日銀が7月に発表した6月の企業短期経済観測調査(日銀短観)によると全産業ベースでの九州・沖縄の業況判断DI(「良い」−「悪い」)はマイナス13と、前回3月調査から8ポイント悪化した。ただ、全国ベースでの業況判断DIは6月がマイナス18だから、九州・沖縄はこれを5ポイント上回る水準に踏みとどまったともいえる(資料1)。
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企業の景況判断DI
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こうした傾向が特に顕著に現れたのが製造業だ。九州・沖縄の製造業の6月の業況判断DIはマイナス8。全国ベースではマイナス15だったから、その約半分の落ち込みにとどまった。3カ月先の9月を予測するDIでは、九州・沖縄の全産業はマイナス15と全国並みだが、製造業は2ポイント改善のマイナス6と、マイナス幅は全国よりも2ポイント小さい。 信金中央金庫地域・中小企業研究所が中小企業を対象とした緊急調査(6月1〜7日実施、有効回答数13,794社)の結果を見ても、「東日本大震災で直接的、もしくは間接的に被害を受けましたか」との問いに対し、「被害を受けず」との回答が九州北部で45.5%、九州南部で41.8%と、四国の48.7%に次ぐ低い水準にとどまった。「被害を受けた」とした企業が挙げた項目は「物流の遅延・停止」「原材料等の不足」などのサプライチェーンにかかわる問題と、「消費自粛の雰囲気」という心理面によるものが大きかった。「4−6月期の売り上げと、仮に震災がなかった場合との売り上げの比較」に関する問いでは、「ほぼ変化なし」とした割合が九州北部で71.3%、九州南部で67.5%となり、全国平均の55.5%を大きく上回った(資料2)。売り上げの変化率でみた場合は、九州北部が4.9%減、九州南部が5.8%減と、全国平均の7.9%減より小さかった。
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仮に震災がなかった場所の売り上げの比較
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大震災に見舞われた中でも、九州・沖縄の中小企業が被った影響が相対的に小さい背景には、もちろん震災地域から最も遠くに位置すること、鉄鋼など素材や食品への代替生産の需要が高まったことは言うまでもない。同時に鉄鋼・金属や造船、化学など従来から九州に拠点を構えてきた基幹産業に加えて、半導体や電機、自動車などの進出に対応し、その周辺に地域の中小企業が着実に根を張ってきた努力の結果であるとも見られる。
総務省が2011年から公表を開始した事業所版の国勢調査ともいえる「経済センサス」によると、2009年7月時点で九州7県の事業所数(民営)は61万2559カ所(資料3)。このうち、製造業は3万6684カ所で、全体の6.0%を占めた。単純比較ではあるが、参考として経済センサスに統合される前の「事業所・企業統計調査報告」の2006年時点での数値と比べてみる。事業所総数は9862カ所減少しているが、製造業については1043カ所増加しており、構成比で0.3ポイントの上昇だ。全国ベースで見ると製造業の構成比は0.2ポイント低下している。
事業所数の増加は雇用面でも一定の好影響を示している。「経済センサス」では2009年7月時点の九州7県の製造業の従業員数は71万9147人と、2006年調査より8595人増えた。構成比では全体の12.9%。全国ベースでの構成比16.8%にはまだ遠く届かないが、2006年時点に比べて0.4ポイント上昇した。全国ベースでは0.1ポイントの減少だから健闘しているともとれる。従業員数が増えたのは、福岡県、長崎県、大分県で、なかでも長崎と大分では構成比が1ポイント台の上昇となった。
造船・鉄鋼などのほか、自動車や電機・半導体などの進出企業や関連会社そのもの操業度上昇に伴う面が大きい一方、中小企業が従来から培ってきた技術を磨いたり転用したりすることでこれらの大企業との取引機会を増し、雇用面での活力を地域に与えてきた側面も無視できない。
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日本の産業別の民間事業所と従業者数

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「転業」も起業の一形態

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