九州の活力

福証銘柄の売買代金の推移

2012年11月、衆議院の解散宣言から日本の株式市場の大反撃は始まりました。日経平均指数は8,500円から15,500円まで半年をかけてほぼ一本調子に上がり、歴史的にも類を見ない上昇相場になりました。いわゆるアベノミクス相場です。景気そのものも最悪期を脱し、個人消費を中心に盛り上がりを見せています。

アベノミクス相場は金融政策、財政政策、成長戦略の3本の柱で成り立っています。特に黒田日銀総裁になり金融緩和をすすめることで円安が進み、そのことが株高を生むという円安=株高の構造ができたことが一番アベノミクス相場で効いたことです。しかし財政政策も不透明で、成長戦略も期待されていた法人税減税が肩透かしであったということで、株式市場も5月23日以降、乱高下を続けています。7月の参議院選挙で自民党が予想通り圧勝し、衆議院と参議院のねじれ状態が解消されました。そのような中でリーダーシップを持って経済改革を断行できるかが今後の安倍内閣のお手並み拝見といったところです。

九州関連銘柄においても、原発の再稼働見通しで九州電力株が持ち直していることを筆頭に軒並み堅調です。ただ、消費関連銘柄の中には思うように株価が上昇していない企業も見受けられます。しかし、日本全体の実体経済は上向きになっており、九州経済にも良い影響を与えるはずなので、今回のアベノミクス相場や好景気を活かして、構造改革や新規事業の大胆な展開に繋げることができれば、大きなチャンスであるといえます。

特に九州には半導体関連企業や自動車関連企業の工場が多く、円安により輸出産業が好調になれば、その好影響を強く受けます。またグリーン関連企業、特に太陽光電池モジュールの生産においては全国の30%を占めており、代替エネルギー関連企業が成長をしていけば恩恵を受けるような構造になっています。今後の九州経済の見通しは明るいと考えています。

東証と大証が統合する中で、地方証券取引所とそこに上場している企業の在り方とその使命。

さて、東京証券取引所と大阪証券取引所が統合し、日本証券取引所として日本の株式市場ではガリバー的な存在になりました。そのような中で、札幌証券取引所、名古屋証券取引所、福岡証券取引所は地方で気を吐く数少ない取引所になりました。証券取引所が巨大化することは、証券取引所のグローバル競争の中では避けて通れない流れです。一方で、証券取引所の巨大化にはデメリットもあります。それは、地域ニーズのきめ細かい汲み上げや地域振興を図るという意識が希薄化し、メガ都市に本社のある企業に関心がより集中してしまうことです。そのような中で、九州経済における福岡証券取引所の役割は非常に大きいといえるでしょう。九州経済が発展していくためには地元の企業を発掘・育成し、地域の人々に取り引きをしてもらえる流れを作ることが重要です。その点、福岡証券取引所は「九州IPO挑戦隊」というユニークな取り組みをしており、九州で上場をしようとする企業に対して情報交換の場や株式公開(IPO)をするための道場的な場を提供しています。地場に根付いている取引所には、その地域の元気企業をシードの段階から発見し、切磋琢磨して全国の競合企業との競争に勝ち抜ける骨太の会社に作り上げていく、という使命があります。会社を起業し、新しい会社が生まれていくことが雇用を作り、地域に税金を落とすことになる訳で、会社の育成は重要な取引所の役割です。こうした役割を果たすことが、地域に居を構え、現場に近い取引所の責務であると思えます。

これからの課題は、九州における投資家層の拡大です。福岡証券取引所がその責務を十分に果たすためには、魅力ある企業を新たに発掘・育成するだけでなく、すでに上場している会社の魅力を伝えて、地域の人たちにも株式の保有や取り引きをしてもらうことが重要です。そのためには九州に進出している大手の証券会社の支店や地方銀行、地場の証券会社などと組んで、積極的に九州企業の魅力を伝えたり、経営者を紹介したりすることが必要です。

福証銘柄の株価指標の推移

おもしろい会社なら、地方証券取引所の銘柄から探すべき。

そもそも投資の意義とは何でしょうか。多くの人は投資というとお金でお金を生むことだと考えています。しかしちょっと待ってください。投資って株を買うことや投機をすることなのでしょうか。

私は投資というものは、エネルギーを投入して未来からお返しをいただくことだと思っています。例えば、パンのメーカーがパンの工場を作ることも投資です。パンの工場はお金があればできるのかというとそんなことはありません。そこには販路が必要であるし、パンの製造に関するノウハウが必要だし、工場長も工員も必要です。それを支える経理も総務も財務の人たちも必要でしょう。パンの工場を作るには、時間や人手、ノウハウ・土地・資金などが必要です。そしてリターンはもちろんそこで作られるパンを売ることによって得られる利益、すなわちお金ですが、他に得られるものは、製造ノウハウや働く誇りややりがい、お客さまの感謝などたくさんのものがあります。投資はお金でお金を生むことだと条件反射的に思う人は、逆にいうとすべてを金勘定でしか考えられない人です。株式投資も一見、お金でお金を生む行為に見えますが、その利益の源泉はその会社の社員たちの労働の結晶であり、そこにある生々しい人間の行動に「投資」しているのです。株式投資は決してマネーゲームではなく、人の営みを支えている崇高な行為なのです。

九州という地域で働き、そこが生活の基盤となっている人たちは、その地域から様々な恩恵を受けています。そのような人たちこそ地元企業の会社について調べて、応援したい会社に少しでも投資をしてみてはいかがでしょうか。九州に工場のある会社、地元で店を開いて地域に根付き頑張っている会社、九州に本社のある会社、もしくは地元出身の経営者が営んでいる会社など、そのような会社に、九州に住んでいる人たちが少しでもいいから投資すれば、その会社を直接的に応援することができます。もちろん、それが福岡証券取引所に上場している会社であればなお良いのですが、幅広く地域経済にお金が回ることが経済を活性化させることになるので、まずは地元の会社に注目をするだけでも、地元の経営者にとっては大いに励みになると思います。

ではどのような会社が良い会社なのか。まずは会社のホームページを見てみましょう。ホームページには上場している会社であれば最近の業績なども掲載されています。ホームページが見やすい会社と見づらい会社では、どちらの株を買いたいでしょうか。そうですよね。見やすくて分かりやすい会社のほうが良いに決まっています。そして、その中で経営者のメッセージを見てみてください。

過去増収増益トレンドで経営者のビジョンが明確な会社であれば、投資価値があります。というのも、投資をするということは、成長して欲しい企業を育てること。だから、ビジョンを持つ経営者に投資することが一番大切です。

九州地域の今後の展望とその可能性。

東証と大証が統合する中で、地方証券取引所とそこに上場している企業の在り方とその使命。

九州経済に私はとても注目しています。歴史・文化の厚みがある地域であり、九州大学というアカデミズムの中心地があります。もとより九州は、自動車産業やロボット、半導体、太陽光発電などの一大生産地であり、技術の蓄積もあります。さらに福岡は昔から博多商人の街で、商売に対する熱心さを持っており、アジア地域と距離的に近いという地理的な優位性も持っています。

一方で、残念なことに優秀で意欲的な若者が東京や大阪に移り、そこで頭角を現している人たちがたくさんいます。とてももったいないことです。その気になれば福岡でも十分に戦える土壌があるのですから、そのような挑戦心溢れる若者を九州の地に引き止めなければいけません。そのためにも九州の地域の中で有望な若者が資金調達をしたり、市場を開拓したりすることをお手伝いする風土を作る必要があります。若くて才能が溢れる人たちが福岡の地域で活躍できる場を提供するのです。実際には福岡県や福岡市ではベンチャー企業家の育成に力を入れ始めています。

九州大学では新しい起業家を育てていくための新しい研究センターを立ち上げています。福岡大学も以前から企業家教育には力を注いでおり、その企業家塾から多くの中堅企業の社長が育ち始めています。このように、若者が力を発揮できる環境が醸成されつつある福岡は、全国の中でもとても大きな可能性を持っています。その可能性をここに開花させるためには、九州の地域内でお金を回していくという心意気や行動が重要だと私は思っています。

投資は未来を創るもの。

ご存じのように、福岡には証券取引所があります。これはとても大切な地域の宝です。しかし九州で暮らしている人たちがその宝の存在に気がついていません。それはとても残念なことです。地域経済で会社を産み、育て、そこで取り引きを行い、地域の人たちが大切な資産としてさらに大きく育てていくことで、地域がより活性化します。残念ながら北海道、中部、そして九州の地域以外では地方証券取引所がなく、地域間の金融市場の流通の場が少なくなっています。投資はお金でお金を増やすものではありません。投資は未来を創るものです。そして、その未来は地元の人たちで作りあげるべきものです。

まずは九州にある会社に関心を持ちましょう。そのような行動が会社を鍛えて、そして強くなり、強い会社は結果的に地域経済を支えることになるのです。

東京証券取引所と大阪証券取引所が合併したことはむしろチャンスです。地域の証券取引所の価値を十分に認識して、投資で九州の未来を創り出して行きましょう。私は九州の未来、福岡証券取引所の未来に大変期待を寄せています。

藤野英人。