魅力を解説!

はじめに

私のファンドマネージャーとしてのスタートは28年前に新入社員として損害保険会社の有価証券部に配属されたことに始まる。企業と保険会社の財務面でのつながりは、生命保険会社が企業融資を中心としていたのに対して、損害保険会社は業務上の株式購入という形を採るのが一般的であり、私の所属していた会社でもおよそ上場企業の三分の一程度の銘柄を保有していた。

当然、地方の証券取引所に上場する企業も多く、送られてくる事業報告書や直接的に受ける説明により、地方の証券取引所に上場企業が存在し、また、それを目指す企業群があるということが、いかに地方経済全体の強さや活性化に結びつき、新たな労働力を産み出す教育機関に対しても影響を与えるかということは、人よりも強く認識していたつもりである。そのため、2000年、2001年に、相次いで新潟、広島、京都の証券取引所がその役目を終えたニュースをとても寂しい気持ちで受け止めたことを覚えている。今回の寄稿に際して、まずは、現在でも地方の取引所としての機能をきちんと果たしている福岡証券取引所、福証単独上場会社の会(以下、「福証単場会」)、経済諸団体などの取組みに対して心から敬意を表したいと思う。

私は現在、ラジオNIKKEIで毎週水曜日の午前8時40分から開場までの20分間放送されている「アサザイ」という番組のパーソナリティーを務めている。前日の海外市場や今後の相場見通しに加えて、毎回、12分程度上場企業の社長と私の対談・インタビューを流したうえで、その企業分析を私が披露するというIR番組である。便利になったもので、昔は短波ラジオでしか聴けなかった放送が、現在はスマートホンやパソコンを用いてホームページから簡単に聴くことができ、70局程度のラジオを聴くことが出来る「radiko」の時間帯聴取率において、放送開始以来、全国1位を続けている。これは、いかに個人投資家が企業のIR活動に関心が高いかということを表しているが、社長インタビューをとおして、私は自社のDNAである創業の地や本店所在地に非常にこだわりを持つ地域が2つ存在することを感じる。それは、京都と九州である。

九州で受け入れられたものは、全国に受け入れられる

京都の企業群に感じることは、自社の信念を貫いた結果、企業として成長したが、たまたま同じような会社が京都に多いと各社が思っているきらいがあるということである。一匹狼的で、他の大都市に対してライバル心を持たない代わりに、京都企業同士のつながりの強さもあまり感じられない。

一方で、九州の企業に共通するものは、九州の企業群の深いつながりと、九州において成功したことを、他の地域において展開するというビジネスモデルである。

この「九州で成功したことが他の地域でも成功する」ということは、九州の先見性を表していることに他ならないのだが、実はこの点が投資家の間にあまり伝わっていないことを感じる。一例を挙げると、「リンガーハット」について、セミナーで挙手形式のアンケートをとったところ、8割の個人投資家が「『長崎ちゃんぽん』という食べ物を全国展開で広めた東京の会社」と思っていた。マクドナルドと同列に見ているのである。「全国500店舗以上で展開しているが、その約半数が九州地区にあり、九州でのドミナント展開を全国に広げた企業である。今でも地産地消を心がけており、西日本地区の店舗で使う野菜は九州産にこだわっている」と解説すると非常に驚かれた。テレビ朝日系の番組『お願い!ランキングGOLD』の「1万人が選ぶ第1回麺チェーン店総選挙」で、リンガーハットは、第1位、第3位、第10位と3商品もトップ10にランクインを果たして圧勝したが、これは九州で受け入れられたものが全国で受け入れられることを示している。

実は、この「九州の先見性」にいち早く注目したのは、国内外の洋服やバッグなどのブランド・メーカーであった。今から30年以上前から、ブランド店は、福岡と熊本の両店舗での売れ筋商品を注目しており、その姿勢は変わっていない。

九州のマーケティング

九州のビジネスモデルが全国に通じる背景

この九州のマーケティングが全国に通じる背景にあるものは、九州が第1次産業から第3次産業に至るまで、産業バランスが良く、全体がひとつの国のような構造になっていることにあると思われる。

各県の漁獲高、農業生産高の大きさに加えて、牛・豚・鶏の畜産は日本のトップレベルであり、林業も盛んである。また、かつて豊富に生産された原料炭・一般炭という石炭がもたらした鉄鋼・造船・化学・素材などの第二次産業は、その規模の縮小を補う形で半導体製造、自動車などの輸送用機器製造が興り、特に半導体関連では「シリコンアイランド」と呼ばれ、世界シェアも1割程度占める巨大な産業として成長を遂げている。そして、強い経済を支えるには、第3次産業の強い金融機関の存在が不可欠であるが、バブル崩壊後、再編の進んだ地方銀行がその役割を変わらずに果たしており、メガバンクといえども、この企業と地方銀行の強い結びつきになかなか入り込めずにいることは確かである。このようなバランスの取れた九州地区のGDPは国にあてはめてみると、20位から25位の位置におり、台湾とほぼ同じレベルで、15位前後の韓国の半分程度に相当する大きなものである。

そして、また、これらの経済活動の状況をきちんと精査し、開示するという姿勢を貫いてきたことも各企業のみならず、投資家に与えた影響は大きい。

「木を見る。森を見る。」という言葉が株式の世界にあるが、個別企業を見る際にその企業の属する業種やマクロ経済の状況を知ることは重要である。米国株や中国株に投資する際に、その国の景気の動向やマクロ指標を見ずに個別企業の選別に入ることはないだろう。同様のことが地方銘柄への投資にも求められる。この部分において、経済活動のマクロ的な数字を真摯に追ってきた、公益財団法人九州経済調査協会や企業のつながりの象徴である九州経済連合会が果たしてきた役割は大きい。

割安感の強い『福証単場会銘柄』

弊社は、金融4業種を除く29業種の全上場企業について、経営指標からランキングを算出している唯一の会社であり、そのデータは個別企業をはじめ各方面で利用されている。

その「総合経営指標ランキング」は、①「成長性」、②「資本利益率(ROE、ROAが反映される)」、③「売上高利益率」、④「財務健全性」、⑤健全配当性向(配当性向と、ROEと配当性向の掛け合わせであるDOEが反映される)」の5項目で構成されているが、各項目について、全国の全上場企業と福岡証券取引所上場銘柄、それに福証単場会銘柄を比較してみると、福岡証券取引所上場銘柄のうち、ランキング対象96社の数値は、各項目ともに全上場企業平均に遜色の無いレベルの数値となっているが、福証単場会の対象企業27社は、さらに特筆すべき点として、①の「成長性において、15社が平均を上回り、そのうち12社については、全3,279社中、上位1,000位以内にランクインしているということが挙げられる。これは、今期見込みも含めた直近4期の売上高、各利益の成長性が高いことを示している。

TOPIXと福岡証券取引所

ここで、TOPIXと福岡証券取引所の株価指数の推移を比較してみたい。2004年1月からリーマン・ショック後の月末値最安値を記録した2009年2月までのパフォーマンスは、福証株価指数が -9.6%、TOPIXが-17.8%となっており、福証の方が下落相場時に底堅い動きを示したことが分かる一方で、アベノミクス相場の始まる前月である2012年10月末からこの8月11日までの上昇率は、TOPIXが68.7%であるのに対して、福証株価指数は48.3%と20%程度相対的に下回っている。

それでは、バリュエーションはどうなっているかというと、8月11日時点でTOPIX構成銘柄の加重平均PER(今期見込みベース)は15.87倍、加重平均PBR(実績ベース)は1.27倍であるのに対して、福岡証券取引所に上場する116社の加重平均は、PERが15.42倍、PBRが1.29倍(弊社試算値)と、ほぼ同じレベルであることが分かる。しかし、これを福証単場会33社について試算してみると、PERは14.80倍、PBRに至っては0.97倍と非常に割安感が強いことが分かる。

つまり、福証単場会銘柄には、成長性が高いものの、バリュエーション的に割安な、出遅れ銘柄が数多く存在しているという結論に達する。「宝の国(九州)にお宝銘柄あり」である。

求められる積極的なIR活動

求められる積極的なIR活動

それでは、この出遅れ感を埋めるために企業が出来ることは何かというと、それはIR活動以外にない。株主総会招集通知や有価証券報告書といった法的に求められているもの以外の、株主、投資家に対して行う行為は全てIR活動であり、その基本はホームページの充実である。私のセミナーにおける紙面アンケートでも株式購入の際に8割以上の個人投資家がホームページを訪れていた。ホームページは家の玄関のようなものである。玄関の汚い家はお客様(投資家)を迎える準備が出来ていないということだ。

また、次のステップとして、積極的に個人投資家向けのIRセミナーへ参加することや機関投資家・個人投資家向けの決算説明会における内容の充実が求められる。現在、これらの投資家の投資判断基準が非常に高くなっていることを説明会における質問等から感じる。企業側も、自社の成長性、利益率、資本利益率(ROE、ROA)、配当政策(およびDOE)などについて、同業他社や全社比較をもって、その正当性を強調しなくてはならない時代である。

IR活動の目的。それは、「自社の業務内容、業況をきちんと伝えること」と「業績にふさわしい株価にすること」である。後者は企業価値だけでなく、既存の株主価値も高める行為でもあり、厳しい言い方をすると、これができなくてはIRの目的の半分は達成できていないということである。

上場企業約3,600社のうち、証券会社のアナリストがカバーしている銘柄数は1,200社前後と、約3分の1でしかない。そして、経営指標を比べてみると、カバーされていない銘柄の方が優れているという結果を弊社はつかんでいる。是非、IR活動をとおして自社の「宝」を伝えていって欲しい。無論、「アサザイ」のドアもこれらの企業のために、いつでも開けておく。

スプリングキェピタル